電子カルテのメリット・デメリット

クリニックの電子カルテ導入について、メリットとデメリットをまとめました。新規開業や世代交代の時のご参考にどうぞ。(参考:電子カルテ選びの基礎知識レセコン選びの基礎知識

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電子カルテを導入した場合のメリット

チェック機能により、ミス防止&返戻を削減

電子カルテにはほとんどの場合、カルテ作成やレセプト作成のミスを防ぐ「自動チェック機能」が搭載されています。レセの確認や、支払基金の「縦覧点検・突合点検」に対するチェックなど、人手でやったら時間がかかって大変ですが、チェック機能を使えばあっという間に終わります。

入力がラクで正確

電子カルテには、カルテ入力をサポートする機能がたくさんあります。それらを使うと入力が楽になると同時に入力自体が半自動化されるので、入力のブレや間違いを減らす効果があります。

またキーボード入力の単語登録が可能です。例えば「いん」と入力すれば「インフルエンザ」と変換候補が出るようにすることもできます。入力の学習機能もあるので、使いこむほどに便利になっていくでしょう。

タイピング

コピー&ペースト

カルテ作成・書類作成の時など、手書きだといちいち書く必要がありますが、電子カルテならデータのコピーと再利用が非常に簡単です。

テンプレートでぬけもれ防止

電子カルテには、入力項目をいろいろまとめてテンプレート化する機能があります。疾病や症状ごとにテンプレートを用意しておけば、経過・処方・検査依頼・傷病名といった項目をワンタッチで入力できるようになります。

患者さんへの説明が充実

電子カルテには、処方データや患者さんの検査データが蓄積されていきます。それらをまとめてモニターに表示して、患者さんに見せつつ治療方針などを説明すれば、患者さんの病気に対する理解もぐっと深まるでしょう。

さらに、医療データベースが搭載されている電子カルテもあるので、説明資料を患者さんに見せたり、印刷して渡すことができます。

経過等グラフ表示(Medicom-HRV)

ドクターが院内のデータを一元管理

電子カルテはPACSや検査システム等と連携して、CR画像や検査結果など、患者さんに関するデータを一元管理できます。また、受付システム・レセコンとも連携します。ドクターの手元にある電子カルテが、院内の情報管理の中心になります。

院内でデータ共有

例えばタブレットをアンケートや指示せんとして使って院内のやりとりをスピードアップしたり、患者さんの状態をリアルタイムで確認できるようになります。

検査センターとオンライン接続

電子カルテと外部の検査センターをオンラインで接続すると、ドクターの手元の電子カルテから検査指示を出せて、その後の結果取得までオンライン経由で行えるようになります。

手間がかからずスピーディー。しかも、ヒューマンエラーによるミスを減らすことができます。

検査会社とオンライン接続

<オンライン検査の流れ>

ドクターが電子カルテから検査指示を入力。

電子カルテから検査センターへ、オンラインで依頼データを送信。

検体を運搬・検査。(ここだけアナログ)

検査結果をオンラインで電子カルテに取り込み。

電子カルテはどこでも使えます

電子カルテは、ノートパソコンなどで往診先や自宅に持ち運ぶ事ができます。紙カルテを持ち歩いても過去カルテを見ることしかできませんが、電子カルテを持ち運べば、過去カルテだけでなく患者さんの各種データや院内の情報にもアクセスできます。

電子カルテを持ち出している様子

事務作業を軽減

電子カルテには、紹介状や診断書といった各種書類のテンプレートを多数搭載してあります。書類作成のサポート機能などを使えば、めんどうな事務作業も手間がかかりません。

また院内指示せんなどをテンプレート化し、投薬や注射・処置・検査などの指示内容を印字することもできます。(電子カルテで院内を完全に電子化するのではなく、一部アナログを残した運用も好評です。)

診療情報提供書、診断書の画像(サンプル)

文字が読みやすく検索性が高い

電子カルテの文字たいへん読みやすいです。(ドクターの書く文字が読めなくて困ったことはありませんか?)スタッフの皆さんにも喜ばれ、院内の報連相(ホウ・レン・ソウ)がよりスムーズになるでしょう。

データ検索もできるので、見たい情報にサッとたどり着けます。

電子カルテの文字が読みやすいイメージ画像

電子カルテ導入のデメリット

停電に弱い

パソコンに使える無停電装置などもありますが、継続的に動かすとなると発電機くらいは必要になるでしょう。
もっとも、停電になってしまうと医療機器だけでなく施設全体が動かないので、停電時に普段と変わらない診療をすること自体、なかなか難しいようです。

停電のイメージ画像

故障すると診療が難しい

電子化ゆえの難点が故障です。電子カルテはパソコンですから、使用期間が長くなればなるほど故障のリスクが高まります。(ですので、システムは5年をめどに入れ替えをおすすめしています。)

実際には、電子カルテシステム全ての端末(一般的にパソコン3~5台)が一度に故障することはまずないので、故障で完全にお手上げ、という事態はほとんど起こりません。不具合を予防する仕組みもありますし、故障してないパソコンだけでシステムを運用する、補助システムもあるでしょう。

パソコンが故障しているイメージ

操作方法がわからない!?

電子カルテ使用上、一番多いお困りごとはこれでしょう。
イレギュラーな対応や新人スタッフさんなど、「どうやってデータを入力したら良いのかわからない!」とか、「どうやるのか忘れた!」という事があります。
その方のパソコン能力にもよりますが・・・

患者さんよりも、画面を見てしまう?

電子カルテをキーボードで入力する時は、ドクターはどうしてもモニターの方を向いてしまいます。電子カルテに慣れたドクターだと、患者さんの方を見ないでずっと電子カルテを見ているなんてことも。

紙カルテであれば、片手でサラサラっと書きながら、もう少し患者さんの方を向くこともできるのですが…… これは電子カルテの置き方や、タブレットで入力する、マイクで入力する、などの工夫で多少は改善でます。

紙カルテと電子カルテ、ドクターの身体の向きの違い(イメージ図)

紙より一覧性が低い

モニターの数と大きさにもよりますが、電子カルテは紙カルテに比べるとどうしても一覧性が低く、紙をめくるようにパラパラっと全体を眺めるのが得意ではありません。その代り電子カルテでは、過去カルテの一覧表示や、検索機能などを使うことになります。

ケースバイケースな影響

以下はクリニックの状況や、ドクター・スタッフの皆さんの得手不得手によって変わるので、電子カルテの導入がメリットになる場合も、デメリットになる場合もあります。

天秤のイラスト

導入の学習コスト vs 覚えた後はラク

最初に電子カルテの使い方を覚えるのは、ちょっと大変かもしれません。パソコンや病院で慣れてる方であれば、学習コストはぐっと低いのですが……それを乗り越えてしまえば手書きよりずっとラクで、作業も素早くこなせるようになります。

ドクター・スタッフが勉強している様子

毎日の入力作業(人によって楽/つらい)

キーボード入力をゼロから覚えようとすると大変です。苦手な方は、「ワンタッチ入力」や「音声入力」など便利な方法がいろいろありますから、そういった方法を検討されてはいかがでしょうか。また「医療クラーク」を採用して、その人に入力してもらう方法もあります。

キーボードで入力するドクター

災害時の診療

地震・洪水・土砂崩れなどの時、電子カルテと紙カルテは一長一短です。

地震のイメージ画像

電子カルテ 強み
  • クラウドなどのバックアップシステムがあるので、災害時にもデータが失われる心配が少ない。
  • 遠隔地にて、診療の引き継ぎが可能。
弱み
  • 電気がないと使えないので、紙カルテに比べて復旧が遅れがち。
紙カルテ 強み
  • 紛失・汚れなどがなければ、災害直後でもカルテ内容を確認できる。(電気が不要)
  • 紙カルテが無事なら、災害がなかった地域への患者情報のパスが容易。
弱み
  • 火災などに遭うと、カルテが完全に失われる恐れがある。(焼失)

災害があった「その場所」での診療に関して言えば、そもそも電気がなければ診療自体が難しいので、紙カルテも電子カルテもそれほど変わらないのかも知れません。他の地域へのカルテ情報のパスについては、紙カルテが残っていればよそに送れますし、クラウドにデータがあれば共有できます。

以上が、電子カルテ導入にあたっての一般的なメリット・デメリットです。導入ご検討の際、参考になれば幸いです。

とはいえ、今どきの新規開業のクリニックさんでは、ほとんどが電子カルテを導入されているようです。電子カルテご導入の際は、ぜひお気軽にご相談くださいませ。

電子カルテ導入のご参考に

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